概要

Ferrari 375 America - 1953

1953年

375 America

42 アメリカの後継車である375アメリカは、先代と同じマーケットセグメントをターゲットにしています。コロンボの設計したV型12気筒に代わって採用されたのは、アウレリオ・ランプレーディが設計したツインの吸入管が特徴的なシリンダーヘッドを持つV型12気筒でした。

フォーカス・オン

きわめて優れたメカニズムとエレガントなピニン・ファリーナデザインを併せ持つ375 アメリカは、非常に高価だったにもかかわらず愛好家垂涎のモデルとなりました。動力性能ひとつ取ってもこのクルマは無敵。もっとも、当時はフェラーリと肩を並べるようなレベルにあるライバルは存在しませんでした。製作された12台のなかでも白眉は、第4代ベルギー国王レオポルド3世のためにピニン・ファリーナが製作した2座のカブリオレでしょう。

続き
Ferrari 375 America - 1953
Ferrari 375 America - 1953

モデル

375 アメリカが初めて展示されたのは1953年のパリ・サロンでした。ピニン・ファリーナによる3ウィンドウのクーペで、2トーンフィニッシュが施されていました。ピニン・ファリーナが1952年から53年にかけて212インテルに架装したボディを、より一層洗練させたフォルムに仕上げられています。同時期の250エウローパと事実上等しい、ホイールベース2800mmのシャシーを採用しました。両車ともにロードカー用の奇数のシャシーナンバーが打刻されていましたが、375 アメリカでは数字の最後に“AL(America Lungo :ロング)の文字が付くのが特徴です。

375 アメリカのシャシーはティーポ104というコードネームで呼ばれ、250エウローパのシャシーはティーポ103と呼ばれました。どちらも、当時のフェラーリ歴史上もっとも長いホイールベースのシャシーでした。エンジンを別とすれば、375アメリカと250エウローパのメカニカルコンポーネントはまったく同じです。

大半がピニン・ファリーナによる3ないしは5ウィンドウのクーペボディを架装された点も250エウローパと共通です。ヴィニャーレ製のクーペボディをまとうクルマが3台、カブリオレをまとうクルマも1台存在しています。製作された最後の1台はピニン・ファリーナのクーペボディを架装した極めつけの特別製でした。ラップラウンドフロントウィンドウ、直立したラジエターグリル、ルーフ後端部と左右のテールパネルを結ぶ骨太のピラーを特徴とするこの仕様は、フィアットの総帥、ジャンニ・アニエッリのために製作されたスペシャルでした。ちなみに1954年のトリノ・ショーに展示されて大きな喝采を浴びています。

エンジン

エンジンはランプレーディが設計した“ロングブロック”V型12気筒の発展型。84mm x 68mmのボア・ストロークから4522ccの排気量を得て、公表値300bhpを発生しました。ツインチョークのウェバー40DCZもしくはDCFキャブレターを3基ずらりと並べ、ツイン点火コイルにディストリビューターが組み合わされています。エンジンは4速オールシンクロメッシュのギアボックスと組み合わされ、ユニバーサルジョイントで繋がれたプロペラシャフトを介してリジッドリアアクスルに駆動力を伝えます。なお、最終減速比は顧客が路面を焦がすような加速を望むか、リラックスした高速クルージングを望むかによって、いくつかの選択肢が用意されていました。

これほどホイールベースが長くなったのは、ひとつには“ロングブロック”エンジンを搭載したこと、もうひとつには広々としたキャビンを提供したかったという理由からでした。さらにピニン・ファリーナによるデザインも要素として挙げられるでしょう。彼らは各モデルにデザインの統一性を持たせることで、フェラーリだとすぐに見分けがつく“顔”を創ろうと試みたのです。同時に、生産性の向上も目指していました。250エウローパと375アメリカに類似点の多いボディとシャシーを採用したのにはそういう理由があったのです。

Ferrari 375 America - 1953
Ferrari 375 America - 1953

ただしデザインを完全に統一する時代が到来するのはまだ先のことで、“標準的な”ピニン・ファリーナのクーペにさえ、細部の違いがここかしこに見受けられます。先ほど述べたグラスエリアの処理だけでなく、ボディ細部に施された装飾も様々です。例えばラジエターグリルの周囲になにも付けないのか、あるいはクロームメッキのトリムを巡らせるのかの違いがあり、そのトリムの幅にもいくつかの種類があったのです。加えて個々の顧客のリクエストによる違いは、さらに細部にまでおよびました。

シャシーナンバー0293ALから0355ALまで計10台の375 アメリカが製作されましたが、ちなみに375 アメリカ用の大排気量エンジンに換装された250エウローパが2台存在します。外観からふたつのモデルを識別する決め手はなく、どちらかを特定するにはシャシープレートか、キャブレターをチェックするしかありません。ウェバーの36DCZが付いていれば250エウローパ、40DCZが付いていれば375アメリカということになるのです。

高精細「375 アメリカ」の厳選ベスト・ショット。フォトギャラリーでは、この1953年型フェラーリ・モデルの細部および最も重要部分とともに車輌の際立つ特徴をお愉しみいただけます。

主要諸元

V12  エンジン

タイプ フロント縦置き・60度V型12気筒
ボア・ストローク 84 x 68 mm
1気筒あたり排気量 376.84 cc
総排気量 4522 cc
圧縮比 8 : 1
最高出力 221 kW (300 hp) at 6300 rpm
リッターあたり出力 66 hp/ℓ
最大トルク -
バルブ作動システム SOHC 1気筒あたり2バルブ
燃料供給 ウェバー40 DCFキャブレター(トリプル)
点火装置 1気筒あたり1プラグ、2コイル
潤滑システム ウェットサンプ
クラッチ ツインプレート
フレーム スチール製チューブラーフレーム
サスペンション 前 独立懸架、ダブルウィッシュボーン、リーフスプリング、油圧式ショックアブソーバー
サスペンション 後 ライブアクセル、半楕円スプリング、油圧式ショックアブソーバー
ブレーキ ドラム
トランスミッション 前進4段 +後進1段
ステアリング ウォーム&セクター
タンク容量 140ℓ
タイヤサイズ 前 7.10 x 15
タイヤサイズ 後 7.10 x 15
タイプ 2座クーペ
全長 -
全幅 -
全高 -
ホイールベース 2800 mm
トレッド 前 1325 mm
トレッド 後 1320 mm
車重 1150 kg(乾燥重量)
最高速度 250 km/h
0-100 km/h -
0-400 m -
0-1000 m -