概要

Dino 206 GT - 1967

1967年

Dino 206 GT

ェラーリにとって販売台数を増やし、生産コストを抑えることは避けては通れない道になりつつありました。ディーノ 196Sというプロトタイプがすでにファクトリーで完成していたこともあり、比較的小排気量で、フェラーリにとって初めてアッセンブリーライン上で組み立てることのできるロードゴーイングカーを設計する千載一遇のチャンスでした。ピニンファリーナが伝統様式に則った素晴らしいラインを描いた一方で、フィアット製V6をミドシップに横置きできるようにフェラーリが開発を進めました。

フォーカス・オン

このモデルは当初、“本物の”フェラーリではないという理由で、純粋主義者から反発を受けています。しかし顧客が実車を間近に見て、実際に運転してみるとそうした声はたちどころに消えてしまいました。当時のカタログモデルより小さなエンジンを積んだフェラーリが生まれたのは、1967年のF2レギュレーションが引き金でした。新レギュレーションは、F2に搭載できるエンジンは生産型をベースとして、連続した12カ月に500台以上生産されたユニットと定めていたのです。

続き
Ferrari Dino 206 GT - 1967
Ferrari Dino 206 GT - 1967

ストーリー

当時のフェラーリではこれに適うエンジンを、これほど多数生産するなど望むべくもありませんでした。そこでフェラーリは、レースを続けるために、フィアットと手を組むことを決めたのです。フィアットがエンジンを製作し、彼らの製品系列でも上級のフロントエンジンモデルにディーノの名前で搭載する一方で、同じエンジンをフェラーリにも供給しました。フィアット、フェラーリどちらも、モデルにはすべて“Dino”のエンブレムが付いています。

V型エンジンを搭載するフェラーリにディーノの名前が最初に使われたのは、50年代終盤のF1とスポーツレーシングモデルでした。ディーノというのは、1956年に若くしてこの世を去った、エンツォ・フェラーリの息子のファーストネーム。生前、V型エンジンプロジェクトを開発していた故人の業績を偲んで、この名前が使われたのです。60年代序盤、様々なV型エンジンのモデル名にディーノの名前が付けられましたが、1965年に登場した166Pミドエンジン・スポーツレーシングモデルも例外ではありませんでした。ちなみに166Pはその後、206SP および206S スポーツレーシングモデルに発展する原型となります。その166Pこそフェラーリではなくディーノのエンブレムをノーズに付けた初めてのモデルでした。エンブレムは横長の長方形で、ディーノのサインを様式化した文字が黄色地にブルーで描かれていました。

1965年後半、パリ・サロンに1台のミドエンジンプロトタイプがピニンファリーナのブースに展示されました。“ディーノ206GT スペチアーレ”と名付けられたこのプロトタイプはロードカーのデザインスタディで、ボディはスポーツレーシングモデルのシャシーに架装され、エンジンはミドに縦置きされていました。ノーズ全幅にわたる透明なパースペックス製カバーの下のヘッドライトが特徴です。その後、生産型ロードカーは、このヘッドライトを別にして本質的にはこのフォルムをベースに発展していくことになります。垂直に立った、縦方向に薄くて、凹型に湾曲したリアウィンドウが特徴的です。リアクォーターパネルはカムテールにスムーズに流れ込んでいます。

このプロトタイプはスポーツレーシングモデルや、412 Pあるいは330 P4といった大排気量スポーツレーシングカーの影響を強く受けていました。影響はノーズ形状に顕著に現れており、丸く盛り上がったフェンダーはカーブを描いて低い位置のフロントリッドラインに連なります。リアクォーターパネルも流れるようにカムテールにとけ込んでいました。

プロトタイプ

最初のプロトタイプに続いて1966年のトリノ・ショーにもう1台が登場しましたが、やはり縦置きミドシップでした。このプロトタイプは楕円形のラジエターオープニングと、フェンダーに埋め込まれ、パースペックス製カバーの付いたヘッドライトを特徴としています。キャビンルーフが高くなり、最初のプロトタイプに見られたリアウィンドウとクォーターパネルを引き継ぎます。コーナーバンパーが備わることが、コンセプトカーから生産型へと進化していることを示しています。1967年に登場した3台目のプロトタイプでは、ボディはほとんど最終型になっていました。エンジンカバーとトランクリッドはまだ1枚パネルで、ドアのえぐりを貫通するプレートは姿を消し、発表になったばかりの365GT2+2のドアハンドルが早くも付いていました。軽合金ホイールは、フィアット・ディーノと瓜二つでした。しかしながら、もっとも注目すべき変化はエンジンカバーの下にありました。V6は90度回転して横置きとなり、一体型5速トランスミッションがその下、オイルサンプ後方に置かれていました。トランスミッションとサスペンションの設計、開発、製作はすべてフェラーリが社内で行っています。1967年11月のトリノ・ショーまでにボディ細部の微調整は事実上終わっており、展示された1台は生産型とほぼ同一でした。初期型プロトタイプとの相違点を以下に挙げます。
ラジエターアウトレットが3本、フロントリッドの2カ所に開いている。
エンジンリッド上にこれとマッチする熱気抜きスロットが開いている。
ウィンドウシールドの傾斜角がきつくなった。
エンジンとトランクリッドが分離した。

トリノ・ショーに展示されたクルマは、1968年1月のブリュッセル・ショーにも展示された後、テスト車両になっています。最終生産型には透明なパースペックス製ヘッドライトカバーがなく、ドアガラス後方にクォーターウィンドウが追加されています。なお、206GTは左クォーターパネルにクロームメッキの施された燃料注入口が露出しているので、後期型である246GTと容易に見分けが付くはずです。

Ferrari Dino 206 GT - 1967
Ferrari Dino 206 GT - 1967

生産

生産は1968年に始まり1969年まで続きました。1969年、2リッターエンジンは2.4リッターエンジンに換装され、細かい変更とともにディーノ246GTが生まれました。9カ月の生産期間中、およそ150台のディーノ206GTが生産され、そのすべて左ハンドルでした。生産車ボディはホイールベース2280mmのティーポ607シャシー上に架装されます。 2本のメインチューブが縦方向に走り、クロスメンバーとサブフレームでボディを支えるという構造は、これまでのフェラーリの文法通りです。このクルマには、ディーノ・ブランドのもと、新しい偶数のシャシーナンバーが打刻され、同時代のフェラーリロードカーの奇数番号と区別されています。初期のプロトタイプには、フェラーリのコンペティション用偶数番号と、ロードカー用奇数番号の両方のシャシーナンバーが混在しています。

サーボアシスト付きベンチレーテッドディスクブレーキが全輪に備わり、4輪ともダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、油圧ダンパーによる独立サスペンションで、前後にアンチロールバーを備えます。丸みを帯びた滑らかなボディスタイルは世界中で賞賛されました。曲面からなるフロントフェンダーは破綻なくキャビンに流れ込み、上部にえぐりのあるドアパネルを通過して、リアフェンダーのカーブに融け込み、カムテールにより、すとんと切り落とされています。キャビン後方のリアクォーターパネルはフィン形状をなしています。本体がスチール製で開口部のパネルのみアルミ製が一般的だったのに対し、今なおデザインの最高傑作と広く認められているディーノ206GTのボディは総アルミ製でした。テールパネルには1組の丸形ライトが備わります。これは、ほぼ同時期に存在した365GTB/4“デイトナ”と共通する特徴です。楕円形のインストゥルメントパネルにアルミ板を張り、盤面が黒の丸形計器を配している点も両モデルに共通しています。

エンジン

ティーポ135Bエンジンはバンク挟角65°で、各バンクあたり2本のカムシャフトはチェーン駆動。86mm x 57mmのボア・ストロークから1987ccの排気量を得ています。シリンダーブロックはシルミン軽合金の鋳造で、ライナーは鋳鉄、シリンダーヘッドを始めとする様々な鋳造パーツはシルミン軽合金製となります。エンジンはオールシンクロメッシュ5速トランスミッションと一体に横置きされています。トランスミッションアッセンブリーはエンジンのウェットサンプの下、後方に位置します。ツインチョークのウェバー40 DCN F/1キャブレター3基は、ディストリビューターと電子制御添加システムもろともVバンクのなかにマウントされ、公表出力180hpを発揮しました。

Aディーノは独立したブランドして売り出されましたが、フェラーリの遺産をあますことなく受け継いでいたことは間違いありません。「小粒で鮮やか、そして安全……まさにフェラーリ」。そう書かれたセールスカタログにもあるように、ことさらこの点を強調していました。

Ferrari Dino 206 GT - 1967

高精細「ディーノ 206 GT」の厳選ベスト・ショット。フォトギャラリーでは、この1967年型フェラーリ・モデルの細部および最も重要部分とともに車輌の際立つ特徴をお愉しみいただけます。

主要諸元

V6  エンジン

タイプ ミドシップ横置き・65度V型6気筒
ボア・ストローク 86 x 57 mm
1気筒あたり排気量 331.10 cc
総排気量 1986 cc
圧縮比 9 : 1
最高出力 132 kW (180 hp) at 8000 rpm
リッターあたり出力 91 hp/ℓ
最大トルク -
バルブ作動システム DOHC1気筒あたり2バルブ
燃料供給 ウェバー40 DCN F/1 キャブレター(トリプル)
点火装置 1気筒あたり1プラグ、2コイル
潤滑システム ウェットサンプ
クラッチ シングルプレート
フレーム スチール製チューブラーフレーム
サスペンション 前 独立懸架、ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、筒型ショックアブソーバー、アンチロールバー
サスペンション 後 独立懸架、ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、筒型ショックアブソーバー、アンチロールバー
ブレーキ ディスク
トランスミッション 前進5段+後進1段
ステアリング ラック&ピニオン
タンク容量 65ℓ
タイヤサイズ 前 185 VR 14
タイヤサイズ 後 185 VR 14
タイプ 2座クーペ
全長 4150 mm
全幅 1700 mm
全高 1115 mm
ホイールベース 2280 mm
トレッド 前 1425 mm
トレッド 後 1400 mm
車重 900 kg(乾燥重量)
最高速度 235 km/h
0-100 km/h -
0-400 m -
0-1000 m 27秒